精神障害者保健福祉手帳を取得するメリットとデメリット
この記事の著者は、発達障害(ASD)に起因する気分障害(双極性の症状あり)を抱えている社会不適合者です。
今回は、私自身が精神科、心療内科に通院し、精神障害者保健福祉手帳を取得した後、どんなメリットがあったのか、個人の感想を少し混じえながら、文章にまとめてみました。
はじめに
気分障害(うつ状態)や社会適応が苦手な方の中には、精神障害者保健福祉手帳(以下、手帳)の取得を検討している方もいるでしょう。
手帳を取得することで受けられる支援は多岐にわたりますが、一方でデメリットも考慮する必要があります。本記事では、手帳を取得するメリットとデメリットについて詳しく解説します。
メリット
1. 就労支援が受けられる
手帳を持っていることで、障害者雇用枠での就職が可能になります。
障害者雇用枠とは、企業が法律に基づき一定割合の障害者を雇用する制度です。
この枠で採用されると、勤務時間の調整や仕事内容の配慮など、個々の状況に応じた働き方がしやすくなります。また、職場での合理的配慮(休憩時間の確保、業務量の調整など)を受けることができます。
さらに、障害者雇用に特化した就労移行支援事業所を利用することも可能です。
就労移行支援事業所では、職業訓練や面接対策、履歴書の書き方指導などを受けられるほか、実際の職場での実習を通じてスムーズな就職を目指せます。
職場定着のサポートも受けられるため、仕事を安心して続けやすい環境が整っています。
2. 税制優遇を受けられる
手帳を取得すると、以下のような税制優遇措置を受けられることがあります。
- 所得税・住民税の障害者控除
- 一般障害者控除(精神障害者保健福祉手帳2級・3級):所得税では27万円、住民税では26万円の控除を受けることができます。
- 特別障害者控除(精神障害者保健福祉手帳1級):所得税では40万円、住民税では30万円の控除が適用されます。
- 同居特別障害者控除:納税者が扶養する同居の障害者が特別障害者の場合、所得税75万円、住民税53万円の控除を受けられます。
- 相続税の軽減(障害者控除)
- 相続人が障害者である場合、相続税の負担を軽減するために「障害者控除」が適用されます。
- 控除額は「85歳になるまでの年数 × 10万円」(特別障害者の場合は20万円)とされており、高齢になるまでの生活保障を考慮した税制優遇が受けられます。
- 例えば、40歳の障害者が相続人となる場合、85歳までの年数は45年なので、控除額は45年 × 10万円 = 450万円(特別障害者なら900万円)となります。
- 控除しきれない額がある場合、他の相続税額から差し引くことができます。
- 自動車税や軽自動車税の減免(自治体による)
- 障害者本人または障害者と生計を一にする家族が所有し、日常的に利用する自動車の税金が減免される場合があります。
軽自動車税は市区町村、普通自動車税は各都道府県の税事務所と別の管轄となるので、自治体に因っては、軽と普通自動車を両方所持している場合は、両方とも減免になる場合もあります。
- 障害者本人または障害者と生計を一にする家族が所有し、日常的に利用する自動車の税金が減免される場合があります。
3. 公共料金・交通機関の割引
自治体によっては、以下のような割引制度があります。
- バス・電車・タクシー料金の割引
- NHK受信料の減免
- 水道料金や携帯電話料金の割引が適用される場合もあります。
4. 医療費の負担軽減
自治体によりますが、精神障害者保健福祉手帳を持っていると医療費の助成を受けられる場合があります。特に「自立支援医療制度」と併用することで、精神科の通院費用を抑えることができます。
5. 福祉サービスの利用
手帳を持っていると、以下のような福祉サービスが受けやすくなります。
- 就労継続支援A型・B型事業所の利用
就労継続支援事業所は、障害がある方が働きながら支援を受けられる施設です。- A型事業所は、雇用契約を結び、最低賃金以上の給与を受けながら働くことができます。一般就労が難しい方でも、安定した環境で仕事を続けることができます。
- B型事業所は、雇用契約を結ばず、個々のペースに合わせた作業を行います。体調や障害の特性に応じた柔軟な働き方が可能で、無理なく社会参加を目指せます。
- グループホームや障害者向け住宅の入居
精神的な負担を軽減しながら生活できるよう、支援員がいるグループホームや障害者向けの住宅に入居することができます。自立した生活を送りながら、必要な支援を受けることが可能です。 - 相談支援サービスの利用
相談支援サービスでは、障害のある方が生活や就労に関する悩みを相談できる窓口が提供されます。
具体的には、福祉サービスの利用方法、仕事や住居に関するアドバイス、医療機関の紹介など、生活全般のサポートを受けることができます。地域の障害者相談支援センターや市区町村の福祉課で相談することが可能です。
精神障害者保健福祉手帳を持って実感したメリット ー 私の体験談と知人の話
私自身、精神障害者保健福祉手帳を取得して、日常生活の中でさまざまな恩恵を受けています。その中でも特に助かったと感じたのは、公共施設や駐車場の無料利用制度です。
例えば、市営や県営の施設の入場料が無料になることがあります。美術館や博物館、公園の有料ゾーンなど、通常なら費用がかかる場所に気軽に足を運べるのは、気分転換やリフレッシュの面でとてもありがたいと感じています。
また、駐車場の無料利用も大きなメリットです。 実際に施設を利用しなくても、手帳を提示することで無料になる駐車場があるため、都心部に出かける際の負担が大幅に軽減されました。
私は人混みが苦手で、電車やバスといった公共交通機関を利用することが精神的に大きなストレスになってしまいます。
そのため、日常的に軽自動車を利用して移動するのですが、この車の自動車税が免除される制度も、経済的に助かるポイントです。
たとえ少額でも、毎年のことなので回数を重ねると意外と大きな節約になり、負担が軽くなりました。
また、娯楽の面でも手帳の恩恵を感じることがあります。
多くの映画館では、手帳を提示することで映画鑑賞の料金が1,000円に割引されます。精神的に疲れている時や気分転換をしたい時に、映画を気軽に楽しめるのは嬉しいポイントです。
特に、新作映画を通常料金で観ると1,800円ほどかかることを考えると、割引があるだけでハードルが下がり、映画館に足を運ぶ回数も増えました。
これは私の話ではありませんが、統合失調症で手帳を持つ知人の話も紹介したいと思います。
彼は現在、障害年金を受給しながら、就労継続支援A型事業所で一日4時間勤務をしています。
一般のフルタイム勤務では体調を維持するのが難しいものの、A型事業所では短時間の労働が可能なため、精神的・身体的な負担を抑えながら働くことができるそうです。
また、A型事業所では職員のサポートが手厚く、何か困ったことがあればすぐに相談できる環境が整っています。そのため、無理なく安定した収入を得られることが、彼にとって非常に大きな安心材料になっているとのことです。
精神障害者保健福祉手帳を取得したことで、経済的な負担だけでなく、精神的な負担も軽減され、日々の生活が少し楽になる場面が増えたと実感しています。
デメリット
1. 申請・更新手続きの負担
手帳を取得するには、診断書の提出や行政手続きを行う必要があります。
特に初回の申請時には多くの書類を準備しなければなりません。
また、手帳には2年の有効期限があり、一定期間ごとに更新手続きが必要です。
2. 周囲の偏見や誤解
残念ながら、日本ではまだ精神障害に対する旧弊的な偏見が根強い部分もあります。
手帳を持っていることを知られることで、周囲の目が気になる方もいるかもしれません。
ただし、手帳の所持は義務ではなく、必要に応じて開示するかどうかを選択できます。
3. 障害者雇用枠のデメリット
障害者雇用枠で働く場合、一般的に給与水準が一般雇用より低く設定されていることがあります。
また、仕事内容が限定されるケースもあり、自分の能力を十分に活かせないと感じることもあります。
4. 住宅ローンや保険加入の制限
一部の金融機関では、精神障害を理由に住宅ローンの審査が厳しくなることがあります。
また、生命保険や医療保険の加入が制限される場合もあるため、事前に確認が必要です。
5. 取得のための診断書費用
手帳の申請には、精神科医による診断書が必要です。診断書の発行には数千円~1万円程度の費用がかかることがあり、これが負担になる場合もあります。
まとめ
精神障害者保健福祉手帳の取得には、就労支援や税制優遇、医療費の軽減など多くのメリットがあります。
しかし、手続きの手間や社会的な偏見、金融機関の制約といったデメリットも無視できません。自分の状況に合わせて、手帳の取得が適切かどうかを検討することが大切です。
手帳の取得を検討している方は、主治医や支援機関に相談しながら進めると良いでしょう。